3Dプリントのメリット・デメリットを色んな観点から徹底解説!
立体的なものを作り出せる3Dプリントの技術は、今や様々な分野で活用されています。
その3Dプリントについて、導入する際や外注する際のメリットやデメリットを知りたい方は多くいらっしゃるのではないでしょうか。
今回は、3Dプリントメリットやデメリットを知りたい方向けに
・3Dプリントとは、メリットデメリット
・3Dプリントサービス(外注)とは、メリットデメリット
・3Dプリントの種類、メリットデメリット
などを解説します。
導入する際や外注する際のメリットやデメリットを知りたい方は、ぜひ最後までご覧ください。
3Dプリントとは
「3Dプリント」は、「積層造形」とも呼ばれ、デジタルなモデルに基づいて材料を重ねていくことで、物理的な(3D)オブジェクトを作成することを指します。
材料のブロックから削り出して最終製品を作成する切削加工とは異なり、積層造形では材料を付加していくことで最終製品を作り出していくプロセスです。
3Dプリントは、専用のソフトウェアを使用して行います。
個人用から業務用まで幅広い設定に対応しているため、様々な用途に利用することが可能です。
個人的な用途としては、カスタムメイドのアイテムを作成したり、教育用のモデルを作成したり…といった用途に利用されます。
プロフェッショナル向けの用途としては、医療分野ではカスタムメイドの医療用補装具や、自動車・航空宇宙分野のプロトタイプ、軽量構造、建築分野ではモデルやコンポーネントの製造に使用されることが多いです。
メリット
ここでは3Dプリントのメリットについて解説します。
具体的には以下の通りです。
・試作や開発の期間を短縮可能
・開発コストを削減可能
・新しいアイデアの創出
・複雑な形状を具現化可能
それぞれを詳しく見ていきましょう。
試作や開発の期間を短縮可能
3Dプリントの技術を使って社内で色々制作できるようになれば、製造にかかる費用も削減できます。
従来の方法で製造を外注する場合は、メーカーとの打ち合わせや製造にかかる費用が必要でした。
ところが、3Dプリンターで内製化できれば、外注にかかる費用は必要ありません。
導入コストやランニングコストはかかるものの、開発にかかる費用が削減できたら初期コストを回収できるでしょう。
開発コストを削減可能
試作品を外注する場合は、試作品を製作するメーカーとの打ち合わせや実際の製作にかかる費用が必要でした。
しかし、3Dプリントの技術を用いることで試作プロセスを内製化できれば、これらの外注費が不要となります。
試作品をすぐに確認でき、問題点があっても素早く気づいて改善を図れるため、試作回数が減ってさらなるコスト削減につながるでしょう。
また、在庫コストの削減も、メリットのひとつです。
3Dプリンターで必要に応じて金型や治具を製作できるため、それらのストックおよび在庫スペースが不要となります。
新しいアイデアの創出
3Dプリントの技術があれば、新しく思いついたアイデアを気軽に試せるため、新たなアイデアを生み出すハードルが低くなる点がメリットです。
小さいものであれば数時間で造形できるため、新しいアイデアに対して試行錯誤するサイクルも短縮できるでしょう。
もし造形物にミスがあったとしてもすぐに再度造形でき、本格的な製造に入る前に改善することで、後の工程にも影響しにくくなります。
複雑な形状を具現化可能
3Dプリントの技術を用いることで、従来の方式では難しかった複雑な形の試作品を製作できます。
実際に試作品を見て触れることで確認できるため、データ上での考察よりも問題点の早期発見が可能です。
試作段階での細かな検証が可能となり、問題点の発見から改良までのサイクルを短期間で繰り返し行えるため、製品の品質向上が期待できます。
また少量であれば、3Dプリンターで直接製品を製造することも可能です。
カスタマイズを加えることもできるので、顧客の要望に応えた製品を製造できるでしょう。
デメリット
ここでは3Dプリントのデメリットについて解説します。
具体的には以下の通りです。
・大量生産に不向き
・材料の制限
・強度・耐久性に関する課題
・追加加工の発生
それぞれを詳しく見ていきましょう。
大量生産に不向き
3Dプリントを実現する3Dプリンタは、1つのものを造形するのに時間がかかるため、大量生産には向いていません。
造形時間は製品によって異なりますが、20cmの造形物を作り出すのに10時間以上かかるものもあります。
そのため、時間の観点から見ると、従来の方法で製造した方が効率的なケースもあるでしょう。
逆に、3Dプリンターに向いているのは多品種を少量生産する場合です。
材料にも金属や樹脂、石膏などいくつか種類があるので、製造するものや数量によっては3Dプリンターの導入を検討する余地があるでしょう。
材料の制限
3Dプリントを実現する3Dプリンタにはさまざまな造形方式があり、造形方式に応じて適用できる材料が異なります。
例えば、材料を加熱する造形方式では熱可塑性樹脂、紫外線などの光を照射して硬化する造形方式では光硬化性樹脂の採用が必要不可欠です。
新たな造形方式・3Dプリンタ本体の開発によって3Dプリンタを用いた加工法に適用できる材料は増えています。
材料の物性と造形方式の特徴から、狙いの製品を自社で導入する3Dプリンタで造形できるかどうかは、事前に確認する必要があるでしょう。
強度・耐久性に関する課題
3Dプリンタによる造形品は、目的によっては必要な強度や耐久性が確保できない可能性があります。
3Dプリンタは、造形する際に一層ずつ積層造形を行うことから、各層の上下の結合部分が弱く、強度が不足する場合があります。
また、樹脂を用いた3Dプリンタでの加工では光硬化性樹脂を使用する場合があり、光硬化性樹脂は耐候性が低いため、屋外や直射日光を受ける場所で使用する場合には注意が必要です。
3Dプリンタで製造された製品でも、強度の高い材料の選定や造形後に熱処理を行うことで高い強度を実現できる場合もあります。
必要な強度や耐久性を明確にしたうえで、それを実現できる材料・造形方式の選択が重要になるでしょう。
追加加工の発生
3Dプリンタで製造された製品には、時に追加の加工や仕上げが必要な場合があります。
表面の粗さや材料の特性により、追加の手間やコストが発生することが考えられます。
ただし、これも新しい材料やプリンティング技術の進化により改善が見られています。
3Dプリントサービス(外注)とは
3Dプリントサービス(外注)は、作りたい製品や部品の3Dデータをサービス提供業者に渡すことで、3Dプリンタを用いた造形をしてもらえるサービスです。
また、3Dプリントのデータを代行で作成しているサービス提供業者もあります。
今でこそ、少し背を伸ばせば個人用の3Dプリンタが買える時代になりましたが、まだまだ3Dプリンタの価格は高いですし、安物では印刷の品質が安定しません。
だからこそ、3Dプリントでの制作を代行しているサービスや外注先の業者を利用することを考えてみてはいかがでしょうか
メリット
ここでは、3Dプリントサービスを提供している業者を利用するメリットについて紹介します。
具体的には以下の通りです。
・豊富な造形方式・材料を選べる
・自社での設備導入や専門技術者が不要
・仕上がりが保証されている
それぞれを詳しく見ていきましょう。
豊富な造形方式・材料を選べる
3Dプリントサービスを利用することで、金属や樹脂、石膏や紙など様々な材料を用いて造形を行うことが可能です。
一方で、造形方式によって導入が必要な設備や扱える材料、また造形できる形状などの特徴が異なるため、ひとつの3Dプリンタで目的を実現できない場合があるため、複数の設備を平行して導入する必要があります。
3Dプリントの技術は以前に比べて導入が進んでいますが、対応する造形方式や必要な造形精度によってはまだまだ高額な設備です。
また、造形後の後加工が必要な場合には、後加工を行うための設備も必要となり、初めから高額の設備を導入するのはリスクがあります。
そのため、3Dプリントサービスの出力/造形サービスを利用すれば、自社で設備を導入せずに造形物を入手することが可能です。
複数の設備が必要な造形物であったとしても、対応しているサービスを提供している事業者に依頼すれば、自社単独では難しい造形もコストを抑えながら実現することができるでしょう。
自社での設備導入や専門技術者が不要
3Dプリンタは造形方式に応じた設備の導入が必要であり、後工程が必要な場合や高い精度の実現が必要な場合には、設備本体の導入に大きな費用が必要です。
さらに、専門性の高い設備を扱う場合には専門知識を持った技術者が必要であり、自社で育成するには長い期間が必要になります。
もし、外部から3Dプリンタの専門知識を持った人材を獲得しようとしても、自社の需要に合った人材を見つけるのは難しく、見つかったとしても採用には大きなコストがかかることが懸念されます。
このように、自社単独で設備導入や専門の技術者を確保するのは困難であり、かけた分のコストを回収できない可能性が高いです。
3Dプリントサービスの出力/造形サービスを利用することで、大きな初期投資は不要になり、必要な分だけ依頼できる点は大きなメリットになるでしょう。
仕上がりが保証されている
3Dプリントは印刷の特性上、形状によってはサポート材というものを印刷する必要があります。
サポート材とは、製品の形状としては不要ですが、印刷するために仕方なく必要な部分です。
家庭用の3Dプリンタでは、印刷後にサポート材を除去するという面倒な作業が待っています。
3Dプリントサービスでは、サポート材除去まで行い、完成品を送ってくれるので面倒な作業をする必要がありません。
そのため、仕上がりが保証されている点では大きなメリットといえるでしょう。
デメリット
ここでは、3Dプリントサービスを提供している業者を利用するデメリットについて紹介します。
具体的には以下の通りです。
・納品まで時間がかかる
・価格が高い
それぞれを詳しく見ていきましょう。
納品まで時間がかかる
3Dプリンタの最大の魅力は、思い立った瞬間に立体的なものが作れることです。
しかし、3Dプリントの印刷には数時間から数十時間の時間がかかります。
3Dプリントサービスを利用した場合、印刷依頼から受け取りまで、どんなに早くても3日か4日はかかるでしょう。
価格が高い
3Dプリントサービスは手間賃が入っている分、どうしても割高です。
3Dプリントを頻繁に使用する人は、個人で3Dプリンタを買った方が長い目で見て安いかもしれません。
ただ、仕上がりや材料の準備などを考えると、3Dプリントサービスを利用したほうが手間が掛からないでしょう。
仕上がりにばらつきがある
仕上がりにバラつきが発生する点も、3Dプリントを外注するときのデメリットの1つです。
作成業者によってスキルや経験が異なるので、業者次第で必然的に仕上がりの品質にバラつきが生じます。
製品の品質は設備の機能性によっても異なるので、業者が使用している機械次第で仕上がりがバラつく点も把握しておきましょう。
また、業者ごとの得意ジャンルを把握し、そのジャンルの製作を依頼すれば高品質な造形が期待できます。
コストがかかる
3Dプリントを外注すると、色々な手間賃が入っている分どうしても割高です。
3Dプリントを頻繁に使用する人は、個人で3Dプリンタを買った方が長い目で見て安いかもしれません。
ただ、サポート材の除去の時間や自分自身の人件費を考慮すると、そう変わらないかもしれません。
その辺りは自分のスタイルと相談が必要です。
3Dプリントの種類とは
ここでは、3Dプリントの造形方式の種類やそれぞれのメリットデメリットについて解説します。
3Dプリントの種類については、以下のものがあります。
・熱溶解積層方式(FDM)
・光造形方式(SLA / DLP)
・インクジェット方式
・バインダージェット方式
・粉末床溶融結合方式(PBF=パウダーベッド方式)
・メタルデポジッション方式
それぞれを詳しく見ていきましょう。
熱溶解積層方式(FDM)
熱溶解積層方式(FDM)とは、3Dプリンタ世界シェアNo.1である米国Stratasys社が開発した方式です。
現在において主流の方式でもあります。
熱で溶かした樹脂をノズルから押し出し、ソフトクリーム製造機のようなイメージで、一筆書きで1層1層積み重ねて造形していきます。
この画期的な方式はストラタシス創設者のスコットクランプがグルーガンを見て想起したという逸話が残っています。
メリット
材料の自由度が高く、装置の価格も比較的低価格なものが多いことから、広く普及しています。
また、生産数量が少ない試作品や、試作段階における型の造形などに適しています。
デメリット
熱収縮を考慮する必要があり、厳密な寸法精度を出す用途には向いていません。
光造形方式(SLA / DLP)
光造形方式(SLA/DLP)は最も古い3Dプリンターの方式です。
紫外線によって硬化する特性を持つ液体樹脂を材料として、紫外線照射によって一層ずつ硬化させ造形していきます。
光造形方式(SLA/DLP)は、造形に時間がかかるものの、大型の製品をつくることができるSLAと、比較的速い速度で造形できるものの大型の製品は苦手とするDLPのふたつの方式に分かれます。
メリット
エポキシ系樹脂やアクリル系樹脂などの透明樹脂による造形が可能で、なめらかな仕上がりにできるため、モックアップの製造に適しています。
デメリット
強度の求められる用途には向いていません。
インクジェット方式
インクジェット方式という通称もありますが、正式分類では材料噴射法と言います。
その名の通り、材料を噴射し、それに対し光を当てて1層1層積んでいきます。
構造が2Dプリンタでいうインクジェットプリンタに類似していることから、インクジェット方式と呼ばれています。
メリット
繊細で滑らかな表面に仕上げられること、配合次第で様々なカラーを表現できること、複数の材料を同時に扱える点がメリットとして挙げられます。
デメリット
耐久性が弱く、直射日光が当たると劣化しやすいです。
また、稼働音が大きく、サポート剤のニオイがきつい、といった点もあります。
バインダージェット方式
バインダージェット方式(Binder Jetting)は、液体結合剤(バインダー)を金属粉末に噴射し、層ごとに固形化していく方式です。
メリット
造形速度が非常に速い点が強みです。
この技術は、金属粉末を迅速に固めるため、他の方式に比べて生産時間を大幅に短縮できます。
金属粉末の上に積層されるため、サポート材を使用せずに複雑な形状の造形が可能である点もポイントです。
また、未使用の金属粉末は再利用可能なため、材料の無駄を最小限に抑えることができます。
高速な作業性からプロトタイプの作成に広く利用されています。
高い造形速度と複雑な形状の造形能力は、設計段階での迅速な評価や調整に最適です。
また、航空宇宙や自動車、医療分野では、軽量かつ複雑な部品の製造に適しており、カスタムメイドの製品や少量生産のニーズに応えています。
デメリット
バインダーで粉末材料を固めているため、他の方式と比べて強度が劣る傾向にあります。
また、造形精度も他の方式と比べて低い傾向にあります。
バインダーの噴射精度に限界があるため、微細な形状を再現するのは困難です。
粉末床溶融結合方式(PBF=パウダーベッド方式)
パウダーベッド方式は、金属粉末を敷き詰めた床に光線を照射し、その熱で焼結させる方式です。
金属のほかにナイロンや樹脂も用いられるケースがあります。
従来は金属を3Dプリンターで造形する際の主要な方式でした。
メリット
粉末床溶融結合方式のメリットは、金属が使用でき、耐久性の高いモデルが作成できるところです。
対応素材は、金属、セラミック、ナイロン樹脂、エストラマー、ポリスチレンなどです。主に金属製品の製造コストを削減したい、金属パーツの多品種少量生産を実現したいケースに向いています。
デメリット
デメリットは、表面が粗くなってしまうことや、金属粉末の飛散による健康被害のリスクがあるところです。
メタルデポジッション方式
メタルデポジション方式とは、金属積層造形とも呼ばれる金属3Dプリンターの造形方法の一つです。
金属粉末を噴射しながらレーザーを照射し、溶けた金属を積層させていきモデルを作成します。
メリット
メタルデポジション方式のメリットは、同じ金属を扱える粉末床溶融結合方式に比べ、造形速度が速い点、金属粉末の除去が必要ない点があります。
デメリット
デメリットは、粉末床溶融結合方式に比べ、造形できる形状に制限があり、精度も劣る点です。
まとめ
今回は、3Dプリントメリットやデメリットを知りたい方向けに
・3Dプリントとは、メリットデメリット
・3Dプリントサービス(外注)とは、メリットデメリット
・3Dプリントの種類、メリットデメリット
などを解説しました。
3Dプリントを導入する、外注するそれぞれでメリット・デメリットがあります。
また、それぞれの造形方式にもメリット・デメリットがありますので、自分の予算や作りたいものに合わせて、導入するか、外注するかを検討してみてください。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。