3Dプリントの後処理とは?仕上げまでに必要な工程など解説
実用化されて以来急速に普及が進み、いまやものづくりに欠かせない存在として重要な加工方法の一つである3Dプリンタ。
その3Dプリントの制作物で、出来上がった物の仕上がりが、思ったほど満足できるものではなかった、という方も多いのではないでしょうか。
本記事では
・3Dプリントで制作するときに必要な手順
・3Dプリント技術の現状
・3Dプリントの造形物の仕上げ方法
などを解説します。
3Dプリントで出来上がった物の仕上がりが、思ったほど満足できるものではなかった、という方は、ぜひ最後までご覧ください。
3Dプリントで制作するときに必要な手順
ここでは、3Dプリントの技術で制作するときに必要な手順について解説します。
具体的には以下の通りです。
①必要なものを準備する
②3Dデータを作成する
③スライサーソフトでデータを変換する
④3Dプリンターで模型を出力する
⑤サポート材を取り除く
それぞれを詳しく見ていきましょう。
①必要なものを準備する
3Dプリントで模型を作るときに必要な手順として、まずは必要なものを準備する必要があります。
具体的には以下のものが挙げられます。
・3DCAD
・PC
・3Dプリンター
・サポート材の除去に必要な工具
3DCAD
アイデアから造形していきたい場合は、モデルを書くための3DCADが必要です。
3DCADには無料版と有料版のソフトがあるため、要望に見合ったものを選んでみてください。
代表的な3DCADには以下のようなものがあります。
<Funsion360>
Autodesk社が提供する3DCADソフトで、オールマイティな機能が搭載されている。
覚える操作は多いが、日本語で操作方法が質問できるコミュニティサイトがあるため学習環境が整っている。
<DesignSpark Mechanical>
コマンドの種類が限られており、初心者でも簡単に3Dデータが作成できる
<BricsCAD>
有料版の3DCADソフトで、機械設計やBIMデータなどの本格的な機能が備わっている
PC
3DCADソフトが起動できるスペックのPCが必要になりますが、各ソフトの推奨スペックは数ヶ月おきに変わることがあります。
そのため、各3DCADソフトの推奨スペックを調べてから、パソコンを購入することをおすすめします。
3Dプリンター
3Dデータを出力するための3Dプリンターが必要です。
3Dプリンターには、さまざまな出力方式がありますが、プラモデル作りを楽しみたい方は「光造形方式」を選んでください。
その理由は、光造形方式は液体樹脂を用いるため、表面が滑らかで高精度な仕上がりになるためです。
他の造形方式と比較すると造形時間はかかりますが、高い完成度になるためプラモデル作りに最適です。
サポート材の除去に必要な工具
3Dプリンターでプラモデルを作る場合は、必要に応じてサポート材を付けます。
造形物が硬化した後に不要なサポート材を除去していく必要があるため、その際に使う工具を用意しておきましょう。
以下のような工具があると、サポート材除去が効率化できます。
・精密ニッパー
・精密ラジオペンチ
・精密マイナスドライバー
・カッターナイフ
・ピンセット
②3Dデータを作成する
模型3Dデータを作成する方法には、以下の3つの方法があります。
1)3DCADで模型を描く方法
2)模型の3Dデータをサイトからダウンロードする方法
3)3Dスキャナーで模型をスキャンする方法
デザインスキルがない方は、3Dデータをサイトからダウンロードする方法がおすすめです。
サイトには、数多くの3Dデータが登録されているので楽しめるでしょう。
また、3Dデータを作成してくれるサービスもありますので、依頼して見るのも一つの手です。
③スライサーソフトでデータを変換する
作成した模型の3Dデータを、スライサーソフトを使用して3Dプリンター用のデータに変換する手順が必要です。
3DCADデータのSTLは代表的なファイル形式ですが、3DプリンターはSTLデータを認識できません。
そのため、スライサーソフトを用いて3Dプリンター用データに変換する必要があります。
このデータを3Dプリンターに読み込ませることで、一層一層を出力していけるようになるのです。
④3Dプリンターで模型を出力する
模型の3Dデータが用意できたら、それを3Dプリンターに読み込ませて印刷していきます。
模型の印刷向きによって、サポート材の量が変わることが多いです。
サポート材を大量に使用すると「コスト増」「後処理が大変」「造形時間が長くなる」なども問題が出てくるため、模型を印刷する向きに拘るといいでしょう。
⑤サポート材を取り除く
模型の印刷を終えたら、サポート材を取り除いていきます。
模型は品質が重視されるため、細部のサポート材を取り除く場合には工具を使用して慎重に取り除いてください。
また、取り除きやすいサポート材を使用すると後処理が簡単になりますので、模型を作る際は考えておくといいでしょう。
3Dプリント技術の現状
万能に見える3Dプリントの技術ですが、実際はユーザーの期待に応えきれていないのが現状です。
特に造形後の「表面状態(外観)の悪さ」と、「平滑化処理(滑らかにする対策)の困難さ」にユーザーが落胆することが多く、3Dプリント技術の魅力を損なわせている大きな原因の一つになっています。
モノづくりにおける「試作品」や「デザインモデル(製品イメージ先行確認用)」は、3D造形物の表面精度(粗さ精度)の高さが要求されます。
しかし、現在の3Dプリント技術では、「表面の状態」や「質感」をコントロールすることは難しく、用途の目的(要求)を満たすことは困難と言わざるを得ません。
また、耐久性が求められる金属素材等の造形物についても、3Dプリントしたままの表面状態では強度が著しく低下し、製品寿命が期待できない等の影響が懸念されています。
その為、プロトタイプ・デザインモデルとしての品質や精度を向上させた方が良いという認識が一般的です。
3Dプリンタのどの造形方式でも造形をおこなうプロセスで積み重ねた層が段状になり「積層痕(せきそうこん)」として表面に残ります。
この積層痕は3Dプリント造形物の表面品質を悪化させている主な原因です。
例えば、粉体焼結方式の場合は粉末状の原料にレーザーを当てて焼結させ立体を造形していくため、焼結させた箇所と接している粉体が造形物に転写され、造形物の表面がさらに粗くなる傾向にあります。
ほぼ全ての造形方式が立体断面を平面にプリントし、素材を積み重ねて行く方法を採用しているため、この積層痕の問題を解決したい所です。
3Dプリントの造形物の仕上げ方法
ここでは、3Dプリントの造形物の仕上げ方法について解説します。
具体的には以下の方法があります。
・表面を平滑化する方法
・塗装をする方法
それぞれを詳しく見ていきましょう。
表面を平滑化する方法
3Dプリントをすると、造形の工程で積み重ねた層が段状になり、表面に積層痕が残ってしまったり、サポート材を造形物から取り外す際に痕が残ってしまったりする場合があります。
どちらの場合も造形物の表面が粗くなってしまうため、塗装前に研磨や溶解などの表面処理が必要です。
表面処理を行う際の、それぞれのポイントを見ていきましょう。
研磨方式
研磨方式の場合は、研磨フィルムなどの研磨布紙を使って、表面を磨いていきます。
このとき、積層痕の状態に応じて、研磨布紙の砥粒の目の粗さを変えながら研磨し、表面の質感をコントールすることが可能です。
加工が必要な箇所だけに作業を行えることも、研磨のメリットとして挙げられます。
また、研磨では薬品を使用しなくてもよいので屋内で作業ができることも便利と言えるでしょう。
ただし、研磨作業の際には、粉じんが発生します。
適切な安全対策をとることが求められます。
また、研磨作業は時間がかかることも多く、細かい箇所の対応が難しいことが、研磨のデメリットと言えるでしょう。
溶解方式
溶解方式で表面処理を行う場合は、造形物すべての表面を一度に処理できます。
研磨方式に比べて、作業効率がよいメリットがあり、また、造形物の細部まで平滑化処理が行き届くことも溶解方式の利点です。
しかし、樹脂の素材に合わない溶剤を使うと、樹脂の強度低下やべたつきの原因となるので注意する必要があります。
溶解方式のデメリットは、研磨方式のように表面処理の精度をコントールすることが難しい点や、表面が溶けることで寸法が変わり、自重で倒れてしまう場合がある点、溶解処理直後に手で触れると造形物が変形してしまう点が挙げられます。
また、溶解方式で使用する溶剤は揮発性が高いため、取り扱いには注意が必要です。
研磨方式や溶解方式で表面処理を行った後、ブラシと水を使って、表面についたほこりを洗い流しましょう。
その際に、脱イオン水や蒸留水を用いると、よりキレイに造形物を洗浄できます。
塗装をする方法
ここでは、3Dプリントで制作した造形物への塗装素材やテクニックについて説明します。造形物の素材や特徴に合わせて、取り入れてみてください。
塗装の素材(塗料)
塗料は、濃度が薄いものの方が、ダマができたり分厚い層ができたりしにくく扱いやすいのでおススメです。
アート用の塗料であっても、粗い表面に用いるタイプのものは、1回の塗料で済むように、厚塗りになりやすくなっています。
塗装のテクニック
塗料をつけたくない箇所を、マスキングテープや新聞紙、ビニールなどであらかじめカバーしてから、塗装を行いましょう。
これの工程を「マスキング」といいます。
造形物のパーツを塗装する際は、エアブラシやスプレーを使いますが、細部には筆を用いるとよいでしょう。
手作業で塗る場合は、パレットがあると便利です。
屋内でエアブラシやスプレーを使用するときには、塗装ブースが必須です。
塗装ブースの後部にあるホースを屋外に出しておくと、塗料の臭いを排出できます。
屋外で作業する場合は、造形物を段ボール箱に入れて塗装を行うと、塗料の飛び散りなどを防止することが可能です。
ただし、ホースで臭気を排出する際や、屋外で作業する際は、近隣の住宅に配慮しましょう。
より快適に作業するには、防毒マスクを用意することで、臭気をシャットアウトして作業に集中できます。
臭気をそこまで気にしない場合は、粉塵用マスクを使いましょう。
まとめ
今回は、3Dプリントの制作物で、出来上がった物の仕上がりが思ったほど満足できるものではなかった、という方向けに
・3Dプリントで制作するときに必要な手順
・3Dプリント技術の現状
・3Dプリントの造形物の仕上げ方法
などを解説しました。
万能に見える3Dプリントの技術ですが、実際はユーザーの期待に応えきれていないのが現状です。
しかし、3Dプリントの造形物に仕上げを施すことで、期待通りの造形物を得ることも可能になるでしょう。
3Dプリントの仕上げの方法は、素材や自分のやりやすい方法でぜひやってみてください。
本記事が、3Dプリントの制作物で、出来上がった物の仕上がりが思ったほど満足できるものではなかった、という方の参考になれば幸いです。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。